白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 小野不由美
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「助けてやれず、済まない…」男は、幼い麒麟に思いを馳せながら黒い獣を捕らえた。地の底で手にした沙包の鈴が助けになるとは。天の加護がその命を繋いだ歳月、泰麒は数奇な運命を生き、李斎もまた、汚名を着せられ追われた。それでも驍宗の無事を信じたのは、民に安寧が訪れるよう、あの豺虎を玉座から追い落とすため。―戴国の命運は、終焉か開幕か!


☆作者はこの手法を十二国記の既刊でも取っているので驚きはなかったが、あえてラストを描かず、年表だけで単なる歴史上の史実として処理するのは読者の期待に背を向け、エンタメ作としては失格。通常の作者であれば、安心して読める見せ場でカタルシスを提供するのに躊躇いはないに違いない。それまでの緻密な描写で積み上げた危機一髪からの脱出に続く、冷酷で残忍なラスボスを討ち滅ぼすシーンを、あえて描かないのはとても凡人にはマネの出来ない技である。  が、単純な安全懲悪に陥るのを避けたと思われる作者のストイックさを、私は支持する。純文学指向とまでは言わないが、ただのエンタメ作にはしないと言う作者の矜持が頼もしい。

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