珈琲店タレーランの事件簿 6 コーヒーカップいっぱいの愛 岡崎琢磨
無題

大人気「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズ、三年ぶりの最新作! 京都の裏路地にひっそりと佇む珈琲店《タレーラン》。バリスタ・美星の淹れる美味しいコーヒーが評判の喫茶店だ。ある日、オーナーの藻川又次が突然倒れてしまう。病院での検査の結果、狭心症を発症しており、冠動脈バイパス手術を受けなければならないという。すっかり弱気になってしまった70歳の藻川は、姪の美星に、とある依頼をする。四年前に亡くなった愛する妻・千恵の、生前の謎の行動……。美星とアオヤマは、藻川の願いを聞き届けるために調査を開始する。千恵の行動を追って、舞台は日本三景のひとつ「天橋立」に――。


☆三年ぶりの新刊と言うことで、このシリーズに書いてきたレビュー評価を見直すと、何と全て3だった。で、実は今回も3評価である。  私にとっては読み易い文章で、今作も通勤時間読書2日で読み切った。作者の力が入った作と感じたし、綺麗に収束しようと言う意志が窺えたのは評価したいと思う。実際終章など美しい終わり方だと思った。  が、ミステリーとしてはツッコミ所が多いのは相変わらずで、他のレビューアーが指摘すると思うのでいちいち書かないが、ここに来て致命的と思えたのは、ナレーターであるアオヤマの存在。どうやら、とうとう美星とゴールインするのだと思われるが、それで「アオヤマ」とだけでは扱いが軽過ぎないか。これまであえて記号的な表記で、恐らく作者の分身的なキャラ造形だったのだと思うが、いきなり表舞台に引っ張り出された黒子のような違和感を感じてしまった。覚悟を決めて姓名を名乗るべきだと思う。このシリーズが、ここで終わるのならまだしも。もしかしたら、作者自身、シリーズがここまで続くとは思っておらず「アオヤマ」の扱いに迷っているようにも思われる。

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