白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記
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新王践祚―角なき麒麟の決断は。李斎は、荒民らが怪我人を匿った里に辿り着く。だが、髪は白く眼は紅い男の命は、既に絶えていた。驍宗の臣であることを誇りとして、自らを支えた矜持は潰えたのか。そして、李斎の許を離れた泰麒は、妖魔によって病んだ傀儡が徘徊する王宮で、王を追い遣った真意を阿選に迫る。もはや慈悲深き生き物とは言い難い「麒麟」の深謀遠慮とは、如何に。


☆ズシリと来る読み応え抜群の重厚な心理劇。特に阿選との対決で、意志の力で無理な筈の誓約をやってのけた泰麒と、無理を承知で誓約を要求した阿選との心理戦は圧巻。ここから物語は大きな転機を迎え、阿選、泰麒、そして遂に驍宗の心理まで描写されて、クライマックスに向けて大きな期待を抱かせた。  ただ気になったのは、泰麒が異郷育ちなので暴力を知っており耐えられるのだと言うご都合主義的な解釈。あるいは奇跡的に生き延びる驍宗のあり得ないような生命力。ただの異世界ファンタジーならまだしも、リアリティある十二国記の世界では、現実味のなさは気になった。

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