ラッシュライフ 井坂幸太郎
51snasf3CjL__SY346_

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。


☆準レギュラーみたいな泥棒黒澤も出てくるし、実に井坂幸太郎らしいエッセンスが詰まった作品。「現代の寓話」とは言い得て妙で、普通のミステリなどを期待してはいけない。恐らく「小説とはかくあるべし」と言う信念のある人に、井坂幸太郎は向かない。合わないと思ったら無理して読まない方が無難である。こういうレビューが多い作品は、酷評を読んで確かめるクセのある私の感想だ。「リストラされた中年男が野良犬を拾う」だけの作品に、私は感動した。

井坂幸太郎レビュー一覧