分身 東野圭吾
無題
函館市生まれの氏家鞠子は18歳。札幌の大学に通っている。最近、自分にそっくりな女性がテレビ出演していたと聞いた―。小林双葉は東京の女子大生で20歳。アマチュアバンドの歌手だが、なぜか母親からテレビ出演を禁止される。鞠子と双葉、この二人を結ぶものは何か?現代医学の危険な領域を描くサスペンス長篇。


☆クローンと言うSF的アイディアは、クローン羊誕生などもあり、近い未来人間でもあり得るのではないか、と考えさせるものを持っている。そこでヒトのクローンを作ることに倫理的問題はないのかと言うテーマは、今や絵空事ではなくなっており、本作のテーマもかなり現実味を感じる。こんなテーマでエンタメ作に仕上げたのは、流石理系作家東野圭吾面目躍如と言うところか。2人のヒロインが別々の話を少しずつ繋げる構成も見事で、読み易く興味を持続させる事が出来た。  ただし満点評価するには、あまりに強引で無理のある部分も目立つと思う。特にヒロイン2人の体が狙われる理由は流石に机上の空論としか思えなかった。又「分身」の辛さを描いているのは分かるが、悲観的で印象が悪い。例えば「分身」を見た女性が、若い分身と年齢を重ねた自分を比べて、嫉妬し憎悪すると言う書き方はいかがなものか。個人的には一番気になる嫌な部分だった。

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