夢十夜 夏目漱石
41P+CKO6jxL


熊明治期の文学者、夏目漱石の短編小説。初出は「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」[1908(明治41)年]。「第一夜」から「第十夜」までの夢が幻想的で詩的に構成される。十編のうち四編は「こんな夢を見た」と、目覚めた視点から夢の記憶を語り始める。時代という外界に向きあってきた漱石が「夢」というかたちを借りて、自己の深みにある罪悪感や不安に現実感を与えた小説であり、荒正人は第三夜の夢を父親殺しと解釈した。


☆恐らく読む人によって、様々な解釈を許すであろう作品。10編の掌編集だが、通底して感じられたのは不安や罪の意識。ただ「こんな夢を見た」と10作揃えてみたスタイリッシュさは漱石らしいこだわりで、詩的かつ幻想的なムードが味わい深い。

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