聖家族(下)  古川日出男
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狗塚家。青森の名家である彼の家とともに、東北の歴史は記憶されていた。親から子へ、子から孫へ。語り継がれる「正史」は、ふたたび現代と出会い、物語は狗塚三兄弟の逃亡劇から冠木兄妹の誘拐事件へと移る。異境を翔る者、天狗。人を導く、犬。狗塚カナリアが新たな生命の鼓動を聞くとき、すべての時空は「鳥居」によって接続される―。小説史に屹立する「聖家族」、ここに完成。 」

☆血生臭い日本の「鬼門」東北地方の裏歴史をリリカルな文章で描いた大作。まず特筆すべきは素晴らしくリズミカルでくせになる文体で、この大冊をかなり短時間で読み終えることが出来た。サウンドノベルになったと聞いたが、それも納得。死刑囚として収監されていた次兄が処刑されてラストを迎えるが、冒頭と繋がる見事な構成で、輪廻転生を繰り返す聖家族の神話だと、私は読んだ。東北の鬼才古川日出男渾身のメガノベルで、いつまでも読んでいたくなる魅力を感じる。

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