定本 バブリング創世記 筒井康隆
無題


筒井康隆の世紀の奇書が“定本”として三十七年ぶりに復刊!“ドンドンはドンドコの父なり。ドンドンの子ドンドコ、ドンドコドンを生み…”ジャズ・スキャットで使われるバブリングを駆使し、奇想天外なパロディ聖書として読書界を驚倒させた表題作ほか、初刊文庫で未収録だった実験作品「上下左右」(イラストは雑誌掲載時の真鍋博)を収録した完全版。書下しの自作解説を併録。全十篇。


☆表題作と「上下左右」は実験的な作品と思うが、誤解を恐れずあえて言えば小説としては面白くなかった。やっている事は天才筒井康隆ならではで評価出来るのだが、この表題作を最初から最後までしっかり読む事は、私には出来なかった。「上下左右」も面倒で挫折したし、「裏小倉」も全部は読めず、一般的な意味でのエンタメ作とは言いがたいと私は思う。  が、他は十分楽しめる高水準の作品集で、フロイトばりの無意識の恐怖を描いた「鍵」、スラップステイックに暴走するギャグが冴える「ヒノマル酒場」など粒ぞろいだった。実験的作品だけだと辛いので、この多彩なラインナップは魅力的。


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