ブレイブ・ストーリー (下) 宮部みゆき
無題

天空を翔るファイアドラゴン、ジョゾの背に乗って北の帝国に向かうワタルたち。目指すは皇都ソレブリアにそびえる運命の塔。が、うちつづく闘いに傷つき、命を失う仲間もあらわれ…。ミツルとの死闘を制し、ワタルは女神と出会うことができるのか?現世の幸福と幻界の未来。最後に選ぶべきワタルのほんとうの願いとは―。運命に挑んだ少年の壮大なる旅を描いて、勇気と感動の涙をもたらす記念碑的超大作、ついに完結!

☆ここまで良い評価を控えてきたが、最後まで読んで素晴らしい構成力に感嘆。最高評価を進呈したい。幻界に入り込むまで全体の4分の1もかけて丁寧に語られた現実世界が、ラストではホンのおまけ程度で切り上げているのが上手い。本人の分身やライバルとの死闘を経てたたどり着いた運命の塔で願った主人公の本当の願いと言うのが素晴らしく、それまでの余韻に浸るにも余計な後日譚が短いのは助かった。  素晴らしいと書いたが、結局何一つ変わらない事を選択した主人公の願いを、ナーンダで片付ける事の出来ない説得力がこの作品のキモだと思う。そう、辛い現実を変える事は出来ないのだ。それでも心の持ち方一つで明るい未来を目指して強く生き抜こうと言う、良識派宮部みゆきらしい健全なメッセージが感じられた。

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