失われた地図 恩田陸
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これはかつて失われたはずの光景、人々の情念が形を成す「裂け目」。かつて夫婦だった鮎美と遼平は、裂け目を封じることのできる能力を持つ一族だった。息子の誕生で、二人の運命の歯車は狂いはじめ……。


☆この連作集は残念ながらあまり感心しなかった。初めから設定を明かさず、連作の最後になってようやくこの元夫婦が別れねばならなかった事情がわかるのだけど、エンタメ作として書き方が良くなかったと思う。この作品の根幹に関わる部分だけに、初めから明かすべきだったのではないだろうか。さらに致命的に感じたのはキャラクターの魅力が乏しく、印象に残らなかったこと。夫の方は奇妙な髪型なのでまだしも、妻の方が全く容姿が浮かばないのはいかがなものか。一番強烈な印象だったのが、脇役である大阪のカオルではちょっと寂しい。あと「グンカ」は軍靴を連想したが、結局よくわからずモヤモヤがあり、メンタメ作としては不満が残る。文学寄りの作品ではないのだから、もっと明快にわかり易く書いて欲しかった。


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