ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉塩野七生
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失政を重ね帝国に混乱をもたらしたネロが自死した翌年(紀元69年)、ローマには三人の皇帝が現れては消えた。ガルバ、オトー、そしてヴィテリウス。初代皇帝アウグストゥスの血統ではない彼らに帝国の命運が託されたが、傲岸、生硬、怠惰という各人の性格に由来する統治力のなさが露呈、いずれも短期間で破滅した。さらにその間、軍団同士が争う内戦状態に突入し、帝政始まって以来の危機的状況に陥る。果たしてローマ人はこれをいかに乗り越えたのか。


☆ネロの自決後空位の皇帝位につきながら、いずれも短期で破綻した三人の皇帝についての巻。共通して言えるのは、皇帝としての資質に欠け凡庸であったと言う事。結局1年で4人? も皇帝の顔がすげ変わったわけだが、帝政なのにローマ市民が慣れっこになって冷めていた様子が興味深い。数百年続いたローマ帝国のシステムがそれだけ堅固でビクともしないものであった証拠か。現代の世界では民主主義が幅を利かせているが、当時のローマでも民主主義的原理で皇帝が決まっていたかのようだ。ともあれ国の根幹に関わる皇帝位を巡っての混乱で内戦状態に陥りながら、なお立て直したローマ帝国。現代の世界でもなおその興亡は示唆に富んでいる。

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