サウンドトラック〈下〉 古川日出男
51ZjzNgGi5L__SX349_BO1,204,203,200_


かつて母親に殺されそうになり、継母からも拒絶されたヒツジコは、世界を滅ぼそうと誓う。見た者の欲望を暴走させるダンスを身につけた彼女は、自身の通う女子高で、戦闘集団「ガールズ」を組織する―。一方トウタは、友人レニの復讐を手伝うため、東京の地下に住む民族「傾斜人」の殲滅を決意した。トウタとヒツジコの衝動が向かう先とは…。崩壊へと加速する東京を描いた、衝撃の長編小説。


☆下巻に入り物語のカオス化がますますヒートアップ。結局東京が破滅に向かうラストまでノンストップで暴走した感で、目眩を覚えるほどの圧倒的なパワーは評価せざるを得ない。トウタとヒツジコそれぞれの物語が交わる事はなく、混沌は混沌のままだけど、2人の呪詛は確実に東京を滅びに向かわせたのだ。個人的に面白かったのは、ヒツジコのダンスが世界を滅ぼす力を持つ、という設定。日本でも体育の授業で必修化され、若者の必須スキルとなりつつあるが、基本的にダンスの良い面にしかスポットが当たっていない。が、歌と同じように悪用すれば人を呪い殺すような負のパワーも秘めている事を思い知らされた。東京の地名が頻出し、地元の人には興深いだろうと思うが、亜熱帯化して滅んでいく未来は決して絵空事でなく、リアリティがある。ただ、亜熱帯化で滅ぶのがリアル過ぎて、ダンスなんか関係ないじゃん、と取られてしまうのは少し残念だった。

古川日出夫レビュー一覧