本所深川ふしぎ草紙 宮部みゆき
無題


近江屋藤兵衛が殺された。下手人は藤兵衛と折り合いの悪かった娘のお美津だという噂が流れたが……。幼い頃お美津に受けた恩義を忘れず、ほのかな思いを抱き続けた職人がことの真相を探る「片葉の芦」。お嬢さんの恋愛成就の願掛けに丑三つ参りを命ぜられた奉公人の娘おりんの出会った怪異の顛末「送り提灯」など深川七不思議を題材に下町人情の世界を描く7編。宮部ワールド時代小説篇。


☆宮部みゆきの時代小説は初読だが、スト-リーテリングの才はしっかり生かさされて読み応えある連作短編に仕上がっており感心した。この人は本当に小説がうまい。当たり前だが、どの話もよく練られており、単純明快な教訓話になっていない所が良い。子供向けでなく十分大人の観賞にたる内容となっている。
 他の方もおっしゃられているように時代考証に疑問を感じるところろもあるし、地元でないので感慨が浅くなってしまう感もあった。しかしながら、宮部みゆきが実際に現地の取材を基に書いたと思われる、しっかりしたバックグラウンドの上に巧みな話づくりが展開する好作品だった。


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