図書館戦争 図書館戦争シリーズ (1) 有川浩
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2019年(正化31年)。公序良俗を乱す表現を取り締まる『メディア良化法』が成立して30年。高校時代に出会った、図書隊員を名乗る“王子様”の姿を追い求め、行き過ぎた検閲から本を守るための組織・図書隊に入隊した、一人の女の子がいた。名は笠原郁。不器用ながらも、愚直に頑張るその情熱が認められ、エリート部隊・図書特殊部隊に配属されることになったが…!?番外編も収録した本と恋の極上エンタテインメント、スタート。



☆中高生に大人気らしいラノベ。が、私自身もハマってしまい半分寝ないで一気に読み終えた。芝居で言えばエチュード的な書き方をしてると巻末の対談であり、なるほどと思ったのだが、最初に設定とキャラを作り、後はキャラが勝手に動き出すような書き方で、戯曲ではポピュラーな手法だが、おかげでキャラが生き生きと動いている。
 その設定が荒唐無稽で素晴らしい。武力も行使して本を検閲し没収する良化委員会に対抗し、図書館側が武装警備隊を組織して、時々抗争が起こっていると言うあり得ない近未来。現実の図書館に掲示してある図書館自由宣言? から妄想して書いたようだが、まずここまで話を大きくする作者の妄想力に拍手。細部のアラとか気にしちゃいけない。読みたい本を読むだけなのに、それに規制を掛けようとする現実への批判精神に満ちており、本物の本好きなら賞賛せざるを得ない。
 売れまくってるので毀誉褒貶も激しく、アマゾンのレビューをチェックすると酷評も山ほど。が、こんな未熟な小説読むくらいなら、ちゃんと内容の伴った小説を読むべし、とか、大人の観賞には堪えない、とか言ってこの本をけなしてしたり顔する人間には成りたくないと思った。それこそ本書が批判している良化委員会的考え方だから。
 残虐な少年犯罪が起こり、世論が少年法の改定を迫ったり、容疑者の読書歴から有害図書をあぶり出して規制を掛けようとしたりすることに明確なノーを主張しているのも素晴らしい。児童ポルノ規制とか、私も他人事ではないだけに。「有害」図書が存在するからそれに影響を受けて犯罪が増加すると言う俗論は叩き潰すよりないのだ。本書はかなり露骨に言論封鎖の動きを見せている安倍政権下で生きている我々を勇気付けるこの本が若い人達に大人気なのは喜ばしい。
 言論の自由ほど大切な権利はないんだよ。


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