図書館内乱 図書館戦争シリーズ (2)有川浩
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図書隊の中でも最も危険な任務を負う防衛隊員として、日々訓練に励む郁は、中澤毬江という耳の不自由な女の子と出会う。毬江は小さいころから面倒を見てもらっていた図書隊の教官・小牧に、密かな想いを寄せていた。そんな時、検閲機関である良化隊が、郁が勤務する図書館を襲撃、いわれのない罪で小牧を連行していく―かくして郁と図書隊の小牧奪還作戦が発動した!?書き下ろしも収録の本と恋のエンタテインメント第2弾。



☆ベタ甘な恋愛要素がふりかけられた近未来ラノベSFの2巻目である。今作では小牧と郁がそれぞれ身に覚えのない容疑で陰謀に巻き込まれ、長期に渡る尋問を受けるのがハイライト。さすがにそれはないだろうと言うアクロバティックな設定で強引そのもののストーリーだが、この世界に浸ってしまえば現実にもあり得そうな戦慄のエピソードであり、前作の派手な戦闘よりリアリティがあって恐ろしい。他人に仕組まれた冤罪としては、現在将棋の三浦九段が現在進行形で被害を受けておられるようであり、決して絵空事ではないのだ。
 心が折れそうな2人を救ったのがそれぞれが愛する異性への思いと言う支えだ。恋愛要素に関しては読んでいて気恥ずかしくなる甘さだが、正義を貫く作者の批判精神は熱く、勧善懲悪のカタルシスを味わわせてくれる。結局、本が好きで好きな本を自由に読める社会であるべきだ、と言う作者の主張が貫かれているからこそ、こんな荒唐無稽なストーリーが読書人の心を打つのだと思う。


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