図書館革命 図書館戦争シリーズ (4) 有川浩
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☆図書館戦争シリーズ最終巻は長編だが、あっと言う間に読み切れる。予定調和でラブコメ成分がベタ甘過ぎだけど、想像力を雄飛させて勢いで硬派なテーマを書き切った作者には賛辞を送りたい。
 今巻で語られた原発テロから言論統制が行われる、と言うのは今すぐ起きてもおかしくない事態で、むしろ現実ではこんなにうまく収集出来ないだろうと危機感を覚えた。テロの手口と酷似した小説を著した作家が、作家生命を奪われる危機に脅かされ図書隊が保護。この前半部分で、本を読まない人はこの作家のことなど無関心で、テロが怖いから彼の著作に検閲がかけられても仕方ない、と言う世論形成を図書隊が危惧している場面がある。現実に活字離れが深刻な今、日本がテロの標的にされたらこの危惧は絵空事とはとても思われない。この小説の中ではより国民に影響力が強いテレビ局と巧みに連携を図り、この件に関して批判的な報道を行った局が順次放送停止処分を受けリレー式で報道を続けると言う奇策で、逆に世論を味方に付けるのだけど。
 私は言論の自由は極めて大切だと思っているけど、テロの恐怖と天秤に掛けられたらどうなのだろう? 荒唐無稽な設定で突っ走って来たこのシリーズの最終巻で、非常にリアリティのある問題提起を突き付けられたように感じた。


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