化物語(上)西尾維新
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阿良々木暦を目がけて空から降ってきた女の子・戦場ヶ原ひたぎには、およそ体重と呼べるようなものが、全くと言っていいほど、なかった――!?

台湾から現れた新人イラストレーター、“光の魔術師”ことVOFANと新たにコンビを組み、あの西尾維新が満を持して放つ、これぞ現代の怪異!
青春に、おかしなことはつきものだ!


☆アニメの後に読んだが、普通に良かった。むしろこれだけ言葉遊びで書かれている小説を斬新な演出でアニメ化していた事の方に感心。
 基本的に主人公暦が怪異を通じて関わる女子達にひたすら好かれる、ギャルゲーのような作りであり、そのように意識した会話すら見られるのがメタフィクション的。今巻で3人出て来る女子のキャラも極めて個性的で魅力的だが、メインヒロインひたぎを許容出来るかどうかが、この話を楽しめるかどうかの鍵だろう。彼女に共感など出来ないし、付き合いたいとも思えないが、あえてそんなキャラ設定を作ったのが西尾維新の凄さで、凡百のギャルゲー的シナリオとはっきり一線を画している。他の女子キャラも同様で、少なくとも読者が彼女達との純愛を楽しもうとは絶対思えないキャラ設定だ。ただし萌え要素は過剰なくらいサービス満点。
 だが個々のヒロインが抱える問題を怪異につけ込まれ、暦が献身的に解決に尽力してやる様子が意外なほど感動的で、ただの怪奇バカ話では決してない。ヒロイン達が外見もパッとせず学校では劣等生の暦に惹かれるのもむべなるかな、なのである。純愛する気にはならないと書いたが、暦がMでヒロイン達がSなら十分恋愛関係が成立するので、SM愛好家の私にとっては大いに楽しめた・
 最後に物語シリーズ全体の構想を考えた上で、あえてこの話を一番に持って来た西尾維新の巧さも指摘したい。過去のエピソードもある程度語られる事で、話に深みが加わっているのは間違いないし、後続のストーリーもどんどん出す事が出来る。商売が巧い、と言ったら褒め言葉にはならないが。


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