愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争 古谷経衡
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「本書対談を読めば、奥田氏が想像以上の『愛国的精神』の持ち主であることがわかってビックリするだろうし、私のほうは、安倍を支持するタカ派ではあるももの、ときおり奥田氏よりリベラルではないか、と思われる場面が散見されるだろう」……(「はじめに」より抜粋)

安保法制をめぐるSEALDsのデモ活動は、日本社会に少なくない衝撃を与えた。彼らに対して新進気鋭の保守論客である古谷氏は、強い「違和感」と「嫉妬」を覚えた、という。それはいったい、どういうことなのか?

為政者もSEALDsも、保守派もリベラルも、日本を大切に思う気持ちは変わらないはず。ならば、それぞれのいう「愛国」とはどういう意味か。それぞれの「愛国」に日本民族、パトリオティズム(愛郷心)、そして戦争という言葉を重ねたとき、どのような違いが浮かび上がるのか。

本書は古谷氏の「愛国」と「普通」をめぐる論考、さらに古谷氏とSEALDs創設者の奥田愛基氏が、安保とアメリカ、変節する自民党、沖縄の苦悩、日本人と震災などをめぐって議論する対談から構成される。そこでみえてくるのは、いかにこの国において保守と革新が「ねじれて」いるか、ということだ。

その一方、SEALDsを「普通の若者」という枠に押し込める言説のいかがわしさについても古谷氏は懐疑の目を向ける。彼らをメディアで「普通の若者」扱いし、得をするのはいったい誰なのか? デモに行って声を上げる若者を「普通」と呼べるのか?

「本書ではあらゆる場面で勝手に解釈され、鮮明になっていない概念に斜め後ろから光を当てた」(古谷)という批評性溢れる考察は、日本政治の右傾化を心配する人にも、SEALDsの活動に疑問をもつ人にも新鮮なものになるだろう。立場を越えた対話から生まれるどこにもない日本社会論。


☆右翼系の団体に属しデモにも参加していた古谷氏が、左翼系デモで一躍話題になったShieldsのリーダーと対談したと言う内容。どうも古谷氏は足抜けを果たして右翼と一線を画した人である様子。タイトルからして右翼寄りの読者が中心になるだろうから酷評されるであろう事は織り込み済みか。アマゾンびレビューを見てそれを確信したが、私などは非常に共感を覚えた。右翼からも左翼からも攻撃されるのは、ごく普通の一般人である証拠。まあ本書の内容は古谷氏のどっちつかずの姿勢が災いして???だけど、右からも左からも非難される路線はある意味貴重。適当に注目しておきたい。

古谷経衡レビュー一覧