クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子
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「紫木一姫って生徒を学園から救い出すのが、今回のあたしのお仕事」 「救い出すって……まるで学園がその娘を拘禁してるみたいな言い方ですね」 人類最強の請負人、哀川潤から舞い込んだ奇妙な依頼に従って私立澄百合学園、またの名を《首吊高校(クビツリハイスクール)》に潜入した「ぼく」こと“戯言遣い・いーちゃん”は恐るべき殺戮の嵐に巻き込まれる――。


☆中二病全開のシリーズ。そもそも「戯言」なんて普段使わない言葉の選択から、嫌悪感を覚える人もいると思う。言葉の使い方から、無理矢理な登場人物のキャラやら、屁理屈をこねる冗長な展開まで、見事なもの。だがジャンクフードみたいなもので、手軽に読めるし、そういう小説だと割り切ればエンタメ度は高い。スプラッタだけど、気分の悪くなるような描写はない。
 ただ一応謎解きミステリ成分に主張のあった前2作に比べて、異能力者のバトルものと化した今巻は呆気にとられてしまった。こんな人間離れした殺害方法で密室を構成し大量虐殺してしまうとは……そして私には理解不能だったのが、殺害の動機。と、言うか犯人のみならず、語り手も「人類最強の請負人」も、殺された生徒達も、作者の妄想の中で動いてるだけでその心理は不可解だ。
 ケチを付けるばかりではいけない。「こりゃ、ひでえな」と心の中で突っ込みを入れながら、数時間で読み終えてしまったように、面白いのは確かなのである。語り手は名前も明かさず、たびたび出て来る玖渚友との過去も明かされないのは、想像を掻き立て、シリーズものを書くテクニックだなと感じる。シリーズものは全部読む主義の私としては、苦笑しているところだ。でも本書を読む前に古本屋で見かけた第6巻を買ってしまったからなあ……


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