仕事なんか生きがいにするな 生きる意味を再び考える 泉谷閑示
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働くことこそ生きること、何でもいいから仕事を探せという風潮が根強い。しかし、それでは人生は充実しないばかりか、長時間労働で心身ともに蝕まれてしまうだけだ。しかも近年「生きる意味が感じられない」と悩む人が増えている。結局、仕事で幸せになれる人は少数なのだ。では、私たちはどう生きればよいのか。ヒントは、心のおもむくままに日常を遊ぶことにあった――。独自の精神療法で数多くの患者を導いてきた精神科医が、仕事中心の人生から脱し、新しい生きがいを見つける道しるべを示した希望の一冊。


☆評価が非常に難しい本だが、昨年末人生初の入院療養を経験し、約1か月職場から遠ざかっていた私には、心に響く内容だった。私は20日分ほど年休を消化したのだけど、なかなか罪悪感が拭えず、職場に復帰してからも憂鬱だった。たぶん多くの社会人が同様の体験を持っているのではないか? 職場で圧力が掛けられるわけでもないのに定時退社や年休取得に引け目を感じたり、逆に残業や休日出勤で「頑張ってる」自分にやり甲斐を感じたり。私の職場では~曜日はなるべく早く帰ろう、とか旧来の働き方を変えるべく管理職から働きかけがあるのだけど、当たり前のように遅くまで働いているのが常態化している。が実は働いている人間の意識が休むことに罪悪感を覚えてしまう、のが大きな問題なので、本書で救われる人間は少なくないと私は思った。たぶんまともな社会人に哲学的な事を言っても無駄だ、世間知らずめ! と言うような反論が予想されるし、実際にそういう過酷な職場で苦しんでいる人も多いだろうと思うので、万人向けの内容とは言えない。さらにいわゆる「ブラック」な職場は今度も存続するだろうけど、日本全体で働き方を考え直そうと言う動きにあるのは確かで、1人ひとりが本当の生きがいを仕事以外に求めるべきと言う指摘は全うなものと評価したい。
 私自身病気をする前、さらに若い頃は普通に月に百時間以上超過勤務して、しかもある程度やり甲斐を感じていた人間だった。自分で自分の首を絞めていたと、今では思っている。



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