図書館の魔女 烏の伝言 (下)  高田大介
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姫を救出せんとする近衛兵と剛力たち。地下に張り巡らされた暗渠に棲む孤児集団の力を借り、廓筋との全面抗争に突入する。一方、剛力衆の中に、まともに喋れない鳥飼の男がいた。男は一行から離れ、カラスを供に単独行動を始めが……。果たして姫君の奪還はなるか? 裏切りの売国奴は誰なのか? 傑作再臨!


☆下巻ではいよいよ姫君救出作戦が敢行され、スリリングな冒険活劇で血なまぐさい場面も出て来る。が、やはり「コミュニケーション(の不全)」と言う本シリーズを通じての中心テーマは生きており、誰を信じて誰を疑えば良いのか、不完全な情報だけで判断を迫られるのが、何とも厳しい。ここでもまともに言葉を話せない烏使いの大男エゴンが、仲間から愚鈍で知的障害を持っているように疑われているのと裏腹にに、実は高い知力そ持って唯一正しい判断を下す者として描かれている。下巻も半ばを過ぎて、いよいよ千両役者の「図書館の魔女」マツリカが登場し、エゴンの言語障害を初めとして、さまざまな謎を解き明かす、まるで名探偵のような活躍を見せる。
 だが本巻の読み所は何と言っても弱者として蔑まれる者達の、友情や信義に殉ずる、人として大切な物を正面から描いている点で、終盤は何度も目頭が熱くなった。マツイリカ登場後の怒濤の展開は読み易く感動的で、本物の良質なエンタメ性を感じた。
 決して取っ付き易い作品ではないが、「図書館の魔女」のファンならば必読。「コミュニケーション不全」と言う現代的なテーマを中心の良質なエンタメ大作である。


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