幽霊男 横溝正史
51qoK1f0gkL


神保町の裏通りにあるヌードモデル仲介業「共栄美術倶楽部」に初めて現れた異相の男、その名も佐川幽霊男。彼の依頼を受けたモデルが、ホテルの浴槽の湯の中で殺され、そしてさらに……。猟奇マニアたちの秘密の巣でもあったその倶楽部に金田一探偵が登場。右往左往しながらも、欲望に溺れて落ちたマニアたちの犯罪を鮮やかに解決! 妖気漂う原色怪奇曼陀羅。


☆もう設定からして通俗的な、エログロナンセンス。横溝正史が一般読者サービスを念頭に置いて書いたと思しきエンタメ作品で、次々に派手な殺人が起きて、飽きさせない。お馴染み金田一耕助も等々力警部と共に登場して、ファンを楽しませてくれるが、途中までは犯人にしてやられるマヌケぶりが際立ち、右往左往した挙句の解決であまり名推理とは感じられなかった。
 それでも意外な真犯人とか、蝋人形を使ったトリックとか、ミステリ的仕掛けはしっかりしていて、本格推理ではないが、十分楽しめる。横溝正史としては比較的軽めだが、ミステリとしても通俗読み物としても十分通用するエンタメ作品と思う。


横溝正史レビュー一覧