ロング・グッドバイ レイモンド・チャンドラー
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☆村上春樹による新訳を何とか読破。文庫で600ページを超える大作だけに、さすがに時間が掛かった。
 この小説「長いお別れ」としては、ハードボイルドミステリの最高峰として知られ、私自身最も好きな小説の一つ。翻訳で2回、さらに原書でも1回読んだことがある。(一応大学英文科の出身なので)。こんなに読んでるのに内容は結構うろ覚えで今回大いに楽しみながら読むことが出来た。今帰りの電車の中で読み終えて、「やっぱチャンドラーはいいよな~」と心の中で思いつつ205段の石段に耐えて帰ってきたところだ。

 私なりの「ハードボイルド」の解釈は「硬派」。女より男同士の友情を選ぶ、端的に言えばそういう男の生き様を描いた小説で、この話の主人公である私立探偵フィリップ・マーロウは正にそれを地で行っている。私が惹かれるのは、自分自身がそんな生き方とは対極の情けない人間だから。

 村上訳には賛否あるようだが、村上春樹自身が私とおなじようなこの小説に対する思い入れを述べているのがたまらない。「ギムレットには早過ぎる」。この名セリフと再会出来ただけでも、チャンドラーファンとしては感に堪えない。

 なお、この小説の訳文が誰かに似てると思ったけど、わが愛する日本SF界の至宝神林長平だな。前ブログで「グッドラック 戦闘妖精雪風」について書いたけど、彼の作品ももっと読みたくなった。


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