ネバーランド 恩田陸
51lVEgEgzFL__SX330_BO1,204,203,200_


舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。日を追うごとに深まる「謎」。やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになってゆく。驚きと感動に満ちた7日間を描く青春グラフィティ。


☆私が勝手にそう名付けてる「正算型」作家の恩田陸らしい、戯曲のような構造の佳作。田舎のエリート男子校の寮で主要な登場人物は4人だけ、そして期間も限られていて、そのまま舞台に上げられそうな作品だ。情景が思い浮かぶようなノスタルジックで魅力的な設定で、4人の男子がそれぞれに抱えた重い問題を打ち明けていくのはとても読み応えがあった。どうにも救いようがなく思われる設定でも、何とか光明を見出して前へ進もうとする姿を描いているので、ホッとさせられる。
 タイトル「ネバーランド」で内容的にも私が思い浮かべたのはマイケル・ジャクソン。作者が意識したかは不明だが、いずれにしろ光浩がメインキャラと思われた。ただ4人がそれぞれに抱えた問題にスポットを当てていくストーリーなので、1人ずつの問題に深い掘り下げは見られない。光浩についてもっと焦点を当てて欲しいと個人的には感じたが、重くなり過ぎる懸念は感じられる。その辺を計算して作者は薄めに書いてるのだろう。


恩田陸レビュー一覧