おれに関する噂 筒井康隆
無題


テレビのニュース・アナが、だしぬけにおれのことを喋りはじめた――「森下ツトムさんは今日、タイピストをお茶に誘いましたが、ことわられてしまいました」。続いて、新聞が、週刊誌が、おれの噂を書きたてる。なぜ、平凡なサラリーマンであるおれのことを、マスコミはさわぎたてるのか? 黒い笑いと恐怖にみちた表題作、ほか『怪奇たたみ男』など、あなたを狂気の世界に誘う11編。


☆筒井康隆が本領を発揮したシュールな笑いと恐怖で、読み応え十分な短編集。読んで楽しむに不足はないが、常人では思いも付かない発想が天才的で、かんべむさしならずとも、解説しろと言われたら頭を抱えてしまいそうだ。冒頭のリリカルな「蝶」と言う掌編からして、読んで十分頷ける内容なんだけど、どうやってこれを思い付くのか、想像も出来ない。凡人は余計な事を考えず、天才の発想が生み出す傑作群を楽しめば良いのだろう。外れが1作もなく、今の目で見ても十分通用すると思う。

筒井康隆レビュー一覧