ポイズンドーター・ホーリーマザー 湊かなえ
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あなたの「正しさ」を憎みます。 女優の弓香の元に、かつての同級生・理穂から届いた故郷での同窓会の誘い。欠席を表明したのは、今も変わらず抑圧的な母親に会いたくなかったからだ。だが、理穂とメールで連絡を取るうちに思いがけぬ訃報を聞き……。(「ポイズンドーター」)母と娘、姉妹、友だち、男と女。善意と正しさの掛け違いが、眼前の光景を鮮やかに反転させる。名手のエッセンスが全編に満ちた極上の傑作集!


☆私はテレビを見ないし流行には疎いのだが「毒親」って流行ってるのだろうか? 善意が悪意に変わる様が実に面白い連作集。表題作は、娘の立場と母の立場で見え方が百八十度変わる、対になった2作品。読者によって違うと思うが、どちらの立場に共感しても対応できる筆力はさすがだ。普段から観察力が優れているのだろう。芸能界入りした娘が、実の母親の「毒親」ぶりをテレビで告白すると言うのは、とても現代的でリアルさを感じる設定。他作品も、いかにもありそうな設定を巧みに作っており、実に興味深く読むことが出来た。個人的には冒頭作の「蚤取りをしていました」の意味がわかった時が衝撃的で、一番好きな作品である。恐らく多くの人が、それぞれ共感を覚えたり反感を感じるキャラを発見出来るのではなかろうか。意外と万人向けな作品で、エンタメ作家として湊かなえの引き出しの多さを感じる。

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