ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ 三上延(評価:3)
51pqsPuxnlL__SX350_BO1,204,203,200_


ビブリア古書堂に迫る影。太宰治自家用の『晩年』をめぐり、取り引きに訪れた老獪な道具商の男。彼はある一冊の古書を残していく――。奇妙な縁に導かれ、対峙することになった劇作家ウィリアム・シェイクスピアの古書と謎多き仕掛け。青年店員と美しき女店主は、彼女の祖父によって張り巡らされていた巧妙な罠へと嵌っていくのだった……。人から人へと受け継がれる古書と、脈々と続く家族の縁。その物語に幕引きのときがおとずれる。


☆ヒロイン栞子さんの謎めいた母親を初め、胡散臭そうな古書に関わる人物が集結。大団円で栞子さんと五浦は結ばれ、母親との仲も修復されてハッピーエンド、の筈だがモヤモヤ感が残った。古書を巡る関係者が強欲だったり偏屈者ばかりで印象が悪過ぎるのだ。今巻で扱われる西洋古書に至っては何千万円単位の高額取引で、下手すれば栞子さんはビブリア古書堂を五浦も自宅を失い借金まで負う危険に晒されるのだが、ドラマチックなようで逆について行けない気になったのは私だけだろうか。
 私は読書好きだし古書に関する蘊蓄は興味深く面白い。が、古書業界のイメージをこれだけ悪く見せられると辛いものがあるのだ。最後に和解したかのような母親の印象も好転したわけではないし、結局五浦をこの道に引き込む形になった栞子さんまでイマイチの印象が残った。出来れば母親を克服し決別するくらいの生き方を見せて欲しかったのである。古書への情熱の余り家族を捨てた母親の罪が精算されるわけではないし、栞子さんもそうなりそうな不安を持たせるラストは頂けない。


三上延レビュー一覧