胡桃の中の世界 澁澤龍彦
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石、多面体、螺旋、卵、紋章や時計に怪物…「入れ子」さながら、凝縮されたオブジェの中に現実とは異なるもうひとつの世界を見出そうとする試み。さまざまなイメージ、多彩なエピソードを喚起しつつ、人類の結晶志向の系譜をたどるエッセイ集。著者の1970年代以降の、新しい出発点にもなったイメージの博物誌。


☆いつもながら、作者の博覧強記ぶりに圧倒される1冊。「人類の結晶志向」とあるが、確かに私にも「小宇宙」的な物質に魅せせられた子供の頃の記憶があるので、納得のいくものだった。思想的な色はまるでなく、少年のような好奇心を持ち続けた澁澤龍彦。彼のような知性が残してくれた著作群に感謝である。

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