ビブリア古書堂の事件手帖 3 〜栞子さんと消えない絆〜 三上延
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鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂は、その佇まいに似合わず様々な客が訪れる。すっかり常連となった賑やかなあの人や、困惑するような珍客も。人々は懐かしい本に想いを込める。それらは思いもせぬ人と人の絆を表出させることも。美しき女店主は頁をめくるように、古書に秘められたその「言葉」を読み取っていき ──。 彼女と無骨な青年店員が、妙なる絆を目の当たりにしたとき思うのは? 絆はとても近いところにもあるのかもしれない。あるいはこの二人にも。これは“古書と絆”の物語。


☆ワトスン役の五浦君を翻弄する栞子さんの萌えキャラオーラは健在で、年上の知的な眼鏡美女が無防備に接近して巨乳を覗かせれば勃起が治まらないのも頷ける。
 だが、今巻では「キャラミス」にありがちな陥穽に陥ってしまい、やや残念な出来になってしまっていると感じた。これは第一巻から共通したモチーフであるが、名探偵役の栞子さん自身の母親に関する謎を中心にしてしまうと、ミステリ成分が消えてしまうのである。つまり謎を解いてくれる名探偵がいなくなるわけで、これではもはやミステリとは呼べまい。冒頭とラストだけ1人称語りの人物を変え、叙述トリックのような仕掛けを試みたものの、いかんせん底が浅くてうまく機能していない。
 「キャラミス」のキャラクターだけ生かした小説として読めば良いわけだが、このシリーズの肝である古書に関する蘊蓄も、栞子さんの口が重いためにキレ味を欠いている。面白くないわけではないが、全体にモヤモヤ感が残る読後感になってしまった。


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