言葉使い師 神林長平
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秩序を乱し、破壊するものとしてすべての言語活動が禁止されている無言世界を舞台に、言葉を生き物として操る言葉使い師によって、いやおうなく反社会行為者となった男の行手には……言葉に対するSF的アプローチを意欲的に試み、星雲賞を受賞した「言葉使い師」をはじめ、神林長平の才気を伝える六篇を収録。


☆神林長平初期短編集を再読。当時は、才気に溢れSFマインドも濃厚な作品を次々に発表する脅威の新人で、将来を大いに嘱望されていたと思うが、その後期待通り日本を代表する最強SF作家に成長した。彼の作品をリアルタイムで読む事が出来たのは、SFファンとしては僥倖の一語である。
 今読んでも十分評価に値する傑作揃いと思ったが、表題作に顕著な、小説と言う文系的なものに理系的なアプローチを試みる斬新さが彼の武器であり、魅力である事を再認識した。余計な情緒的主観を排除したハードボイルドな文体が彼の特徴で、その文体自体がSF的なのだ。
 その後の名作群を知っているので満点評価とはしないが、大物の片鱗を十分にうかがわせる作品種で、今でも一読の価値はあると思う。


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