帝王の殻 神林長平
☆人口知能と人間との相克がテーマで、「戦闘妖精雪風」にも通じる、言わば作者の十八番。私は将棋が趣味なので大いに興味があり、極めて今日的なテーマと感じた。又、ちょうど5歳児の息子を持つ父親としても、とても面白く読む事が出来た。本書のキモは自分の外部副脳だと言うPAB。利便性から、片時も手放せないアイテムとなったPABが、いつの間にか人間を超越する存在のようになっていき、という流れは、現代人とスマホの関係を想起した。そして、PABの開発で火星の支配者(=帝王)となった男が、死後も残るPABの存在によりなおもその影響力を行使しようと目論むが、権力志向のない息子の代わりに孫を後継者に指名する。その孫はいつまでも言葉を発しない精神障害児と見られていたが、突然新帝王宣言をして前帝王、つまり祖父のPABを破壊する。意表を突くストーリーで、非常に面白かった。デビュー作に続くに三部作の二作目と言う位置付けらしいが、終盤の怒濤の展開は迫力十分で、神林SFの中核を担う傑作と見た。
神林長平レビュー一覧
火星ではひとりが一個、銀色のボール状のパーソナル人工脳を持っている。各人の経験データを蓄積をするこの人工脳は、巨大企業・秋沙能研に制御され、人工副脳となるのだ。そして、事実上火星を支配する秋沙能研の当主は「帝王」と呼ばれていた……。人間を凌駕する機械知性の存在を問う、火星三部作の第二作。
☆人口知能と人間との相克がテーマで、「戦闘妖精雪風」にも通じる、言わば作者の十八番。私は将棋が趣味なので大いに興味があり、極めて今日的なテーマと感じた。又、ちょうど5歳児の息子を持つ父親としても、とても面白く読む事が出来た。本書のキモは自分の外部副脳だと言うPAB。利便性から、片時も手放せないアイテムとなったPABが、いつの間にか人間を超越する存在のようになっていき、という流れは、現代人とスマホの関係を想起した。そして、PABの開発で火星の支配者(=帝王)となった男が、死後も残るPABの存在によりなおもその影響力を行使しようと目論むが、権力志向のない息子の代わりに孫を後継者に指名する。その孫はいつまでも言葉を発しない精神障害児と見られていたが、突然新帝王宣言をして前帝王、つまり祖父のPABを破壊する。意表を突くストーリーで、非常に面白かった。デビュー作に続くに三部作の二作目と言う位置付けらしいが、終盤の怒濤の展開は迫力十分で、神林SFの中核を担う傑作と見た。
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