オニマル 異界犯罪捜査班 結界の密室 田中啓文
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美貌の警部にして、陰陽師のベニー芳垣は、占筮の最中、伊原塚という男に、怨霊による殺害の危機が迫っていることを知る。陰陽の力で男を護ることを命じられたベニーは、伊原塚の部屋の周囲に“最高の結界”を張り、万全の態勢で怨霊を待ち受けるが、はたして伊原塚は無惨に殺されてしまうのだった。邪鬼の侵入を完璧に防ぐはずだった結界はなぜ破られたのか!?前代未聞“異界の密室殺人事件”発生!陰陽師&鬼コンビ、再び。


☆本来敵同士である筈の陰陽師と鬼がコンビを組んで怪事件に挑むオカルトミステリのエンタメ作。テレビアニメを見ていて気付いたのだが、「ゲゲゲの鬼太郎」とテイストが良く似ている。妖怪絡みで凄惨な場面もあるのに全体の雰囲気は陰湿でなく、トボけたユーモアを感じさせる。鬼太郎が刑事になったら鬼丸みたいな感じじゃなかろうか。
 アメリカ帰りのエリートでイケ面だが、大真面目に陰陽の力を犯罪捜査に活用すべく奮闘しズッコけるベニーと、正体を隠して無能な刑事を装いながら実は影で事件を解決してる鬼丸との仇敵コンビのキャラが立って、とても面白い。鬼丸がまだ未熟だが陰陽師の力を発揮して来たベニーに、なぜか魅力を感じて協力してしまうのは、どうも男色趣味があるようにほのめかされてると思うのだが、これ以上発展しない事を希望する。
 それはともかく、短編ミステリとして展開が早くどんどん怪事件が出て来て読者を飽きさせないエンタメ性が優れている。結界と言う一風変わった密室破りが出て来るのもミステリ愛好家には嬉しい趣向。もちろん無理矢理な設定なので無理はあるのだが、「ゲゲゲの鬼太郎」が好きな人にはオススメである。


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