十字軍物語 第四巻: 十字軍の黄昏 塩野七生
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「玉座に座った最初の近代人」と呼ばれる神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ二世の巧みな外交により、イェルサレムではキリスト教徒とイスラム教徒が共存することに。しかしその平和は長続きせず、現代では「聖人」と崇められるフランス王ルイ九世が率いた二度の遠征は惨憺たる結末を迎え……。「神が望んだ戦争」の真の勝者は誰なのか──。『十字軍物語3』を文庫第三巻、第四巻として分冊。


☆大作「十字軍物語」を読了し、全体を通しての感想。まず、キリスト教・イスラム教双方の人物に焦点を当て、読んで面白い小説として書き上げた塩野七生に感謝である。固定観念にとらわれない独自の視点が見られて、とても刺激的だった。世界史の知識としては知っていた「十字軍」についてこれだけ詳しく読んだのは初めてで、日本で一般人の目に触れる本としては類を見ない労作だったと思う。
 あくまで「小説」であるのは承知の上で、キリスト教とイスラム教の衝突について、現代でも大いに参考になる内容だった。「歴史は繰り返す」の言葉通りと思うが、互いに相容れぬ一神教同士が、いかに共生を図っていくべきか。「暗黒の中世」の黒歴史だった十字軍だが、本書の中に大きなヒントが書かれていると感じた。


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