東の海神 西の滄海ー十二国記3 小野不由美
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延王尚隆と延麒六太が誓約を交わし、雁国に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える者が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪か―二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧に導くのか。そして、血の穢れを忌み嫌う麒麟を巻き込んた争乱の行方は。


☆為政者と国民との関わりについて考えさせる内容。癖のあるファンタジー設定になれればすんなり読み進める事が出来るリーダビリティの高さも大きな魅力。この巻では一見ただの放蕩者の国王側と、補佐役を人質に取って地方自治権の譲渡を要求する地方役人側との対立構造がハッキリしていて、ドラマとして読ませる。始めは自治権がないために洪水防止の公共事業が出来ず人民が困っているのを見かねて強硬手段に訴えた地方側に正義がありそうに思えるが、相変わらず側近の意見を聞かず独断専行する王が、傍目には苦戦必至の討伐軍を向けると徐々に旗色が変わる。どんどん人民の志願兵が集まって膨れ上がった国王軍は攻め込まず、その人員で洪水防止の土木作業をやってのけるが、焦った地方官側は戦争に勝つため洪水止めを決壊させる暴挙を演じて馬脚を現し、と言うストーリーの流れの勧善懲悪の話であるため誰にも受け入れられる内容ではあるまいか。従ってエンタテイメント性は満点だが、個人的にいかにも女性作家好みな男性キャラにやや引いてしまうのと、地方官側を完全悪役にしてしまった勧善懲悪の構図がやや気になった。


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