騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(上)
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私は時間を味方につけなくてはならない―妻と別離して彷徨い、海をのぞむ小田原の小暗い森の山荘で、深い孤独の中に暮らす三十六歳の肖像画家。やがて屋根裏のみみずくと夜中に鳴る鈴に導かれ、謎めいた出来事が次々と起こり始める。緑濃い谷の向こう側からあらわれる不思議な白髪の隣人、雑木林の祠と石室、古いレコード、そして「騎士団長」…。物語が豊かに連環する村上文学の結晶!


☆長い物語の幕開けはいかにも村上春樹らしさを感じさせる。いつもながらセックスのハードルがとても低くて驚かされるが、それがさほど重要事と描かれないのが、官能小説と違うところだ。何かが起こるムードが濃厚で、思わせぶりな様々なシンボルが期待感を煽る。地中から出現した石室の存在から、その中に入り込んでの物語を予想したが、果たしてどうか。
 今巻だけだと「セックス」要素が大き過ぎるので減点するが、続きを予想させて期待感を煽る舞台作りはさすがのものがある。他からの雑音をシャットアウトして、物語を楽しんでいきたい。


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