そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー
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その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく! 強烈なサスペンスに彩られた最高傑作! 新訳決定版!


☆余計な夾雑物を一切取り除いた、本格ミステリ度数90%以上のような作品。舞台設定は完璧過ぎるほど完璧で、無人島に呼び出されたスネに傷持つ10人が、過去の過ちを断罪する声を聞かされ、マザーグースの童謡通りに1人ずつ殺されていく見立て殺人。お互い同士疑心暗鬼に陥りながら着々と殺人が実行されて、遂には最後に残った1人も自殺するが、その人物は犯人ではないと言う。島全体を密室と考えて、完璧な密室殺人とも言えるだろう。
 こんな本格ミステリの神髄みたいな舞台に対して、恋愛要素だの社会的正義を問うだのと言った余計な要素一切なしで書き切っているのが凄い。殺人が行われているのにゲーム感覚で、余計な残虐さなどの描写がないのでどんどん読み進める事が出来る。極め付けはポアロやミス・マープルのような探偵役もいないと言う徹底ぶり。
 細部にケチを付けようと思えばいくらでも出来そうだが、そんな些事に捕らわれる読書のどこが面白いのか。余計な要素をシャットアウトした本格ミステリの神髄に酔いたい。


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