膚の下(上) 神林長平
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荒廃した地球を離れ火星での250年間の凍眠を決断した人類は、地球の復興作業にあたる機械人を監視するため、人造人間アートルーパーを創造した。その一人、訓練部隊の慧慈軍曹は火星行きを拒む残留人一派と遭遇、交戦する。創造主から傷つけられた体験、そして機械人アミシャダイらとの出会いを経て、慧慈は自らの存在意義を問いなおし始めるが……。『あなたの魂に安らぎあれ』『帝王の殻』に続く「火星3部作」完結篇


☆三部作の完結編と言いながら、実は時系列的には一番初めの話のようで、人間と人造人間の争いはここから始まったかと思うと、何とも言えない気分になった。初めからそういう構想だったわけではなく、作者自身が後から思索を進めた結果と思うが。
 アミシャダイと言う馴染の機械人の名前が出て来るが、人間、アートルーパー(人造人間)、そして機械人と三者の立場の違いが複雑な思索を要求して、実に読み応えがあった。主人公が人造人間で、知能は高いが人間によって訓練を受けねばならない立場。又、機械人のような人間離れした能力を持つわけではなく、自己の存在意義について悩むストーリーは、AIの発達が目覚ましい今こそ読まれるべき内容と思う。


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