エピローグ 円城塔
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現実宇宙の解像度が上がり、人類がこちら側へと退転してしばらくしてからの物語。現実宇宙を制宙するOTCの構成物質を入手すべく行動する特化採掘大隊の朝戸連と相棒のアラクネ。二つの宇宙で起こった連続殺人事件の謎に挑む刑事クラビト。宇宙と物語に何が起こっているのか? 「ベストSF2015」国内篇第1位の傑作


☆スーパー知性派理系SF作家円城塔の現時点での到達点と思われる最高傑作。内容的にはデビュー作「Self reference engine」を想起したが、オムニバス形式の連作短編だったのが、長編に。情報量の多い高密度な文章を長編に仕上げただけでも凄いと思った。特筆すべきは最先端のハードSFなのに素晴らしいリーダビリティであり、かなり短時間で読み切る事が出来た事。これはハードSFっぽさを抑えて芥川賞を受賞した「道化師の蝶」の文章術を想起した。
 超絶ハードSFでありながら、随所に見られるユーモアやペーソスも絶妙で、別々かと思われた2つのストーリーが最後に重なり、人間と人間を超える存在との恋愛小説と言う形で締め括ったのにも感嘆。これから「プロローグ」の方を読むつもりだが、本作の評価は変わらないだろう。進化する作家円城塔さんをリアルタイムに読む事が出来て幸せである。


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