英語教育幻想 久保田 竜子
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国際化の必要性が叫ばれ始めた一九八〇年代以降、英語教育は常に議論され続けてきたが、特にここ数年「グローバル人材」育成に向けて様々な提言がされてきている。小学校からの早期英語教育、英語による教室指導、外部テストの導入、教員の英語力強化などだ。その裏側には、「英語は全世界の人々をつなぐ」「英語力は経済的成功をもたらす」という、ほとんど信仰のようなものが横たわっている。しかしそれは本当なのだろうか?海外の大学で二五年教鞭をとってきた言語教育学者が、日本人の中に深く根を張る「英語への信仰」と「幻想」を、10のポイントに分けてあぶりだす。


☆政策的に推進されている「英語信仰」に踊らされてバカを見る一般人に警鐘を鳴らす好著。私は立場的には英語教育に近い現場で働いているが、近年のグローバル化と言う名目での英語偏重政策を苦々しく思っている。本書はセンセーショナルに煽るのでなく、ちゃんと学術的に考証しているので、説得力があった。一般に広まって誰も文句が言えないような英語に関する幻想をぶち壊すのが素晴らしい。子細に読んでみると、目からウロコの指摘に驚かされる人も多いのではないだろうか。特に日米同盟の強化に使われているなど、政策的なものを批判しているのは立派。もっとも決してリベラルな論点で偏っているわけではないので、色眼鏡を掛けずに読むことを勧めたい。

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