氷菓
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省エネを信条とする高校一年生、折木奉太郎は、ひょんなことから廃部寸前のクラブ「古典部」に入部することに。「古典部」で出会った好奇心旺盛なヒロイン、千反田える、中学からの腐れ縁、伊原摩耶花と福部里志。彼ら4人が神山高校を舞台に、数々の事件を推理していく青春学園ミステリ。




☆殺人などの犯罪は発生しない「日常の謎」系ミステリの原作をほぼ忠実にアニメ化。京都アニメーションの丁寧で美麗な作画と、ミステリ風味を盛り上げる大胆な演出で見事な傑作に仕上がった。ストーリーの基軸は「省エネ」主義を標榜する主人公奉太郎が、海外放浪中の姉供恵に押し流され、中学時代からの旧友里志や摩耶花と共に廃部の危機にあった古典部に入部。そこで出会った好奇心旺盛なヒロイン千反田えるに懇願される形でさまざまな謎の解決に持ち前の頭脳を発揮する、と言うもの。里志は中学時代摩耶花の告白をはぐらかし続けており、えると奉太郎も微妙な関係からなかなか発展しない。この4人の恋愛模様が描かれる青春ものである。
 ミステリ要素にしても恋愛要素にしても、やや地味で落ち着いた絵柄にマッチした薄味で、リアリティを強く感じさせる。奉太郎はイケ面なのはともかく、基本面倒くさがりで低体温な文化部系男子の典型であるが、姉やえるなど女性の影響で大人の男へと成長していく。別に頼まれたからやるんじゃない、と女性の言いなりになっているのを否定しながら、結局は頑張ってしまうと言う心理的葛藤がとてもリアルで、「(性的な意味でなく)女の影響で変わっていく少年」と言う本作のテーマがよく表現されていると思う。
 原作はまだ続くが、TVアニメ2クールで終わったため、どうしても消化不良な終わりになってしまったのは仕方ないが残念。が、最終話で豪農の跡取り娘としてこの土地で生きていく覚悟を語るえるに、協力者となることを申し出る、つまり告白した奉太郎、と言う場面の美しさは格別でそれなりの一つの結末を見せてくれたと言えると思う。


【キャラクター紹介】

千反田える
01
※ややロリコン性癖のある、多くの日本人男性にとっては理想の女性を具現化したような本物のお嬢様であり、セーラー服と言う設定は反則級の素晴らしさ。黒髪ロングのルックスもさることながら、控え目に見えて好奇心旺盛で、わからない事は素直に人に頼る。これはもう完璧に「男殺し」であり、こんな娘に頼られた奉太郎が「省エネ」主義の禁を破って頑張ってしまうのも当然だろう。極めて悪意に捉えれば、豪農の跡取り娘として必要なオムコさんとして、有能そうな奉太郎を誘惑してたらし込んだのかも知れない。仮にそうであったとしても、こんないい娘なら全然オッケーと思ってしまいそうである。

折木奉太郎

01
※文化部第男子の典型でリアリティーのあるキャラ。彼が、強引な姉や理想的なガールフレンドえるなどの影響で大人の男に成長してくのが本作のテーマだ。が、気が進まないなりに発揮してしまう卓越した推理力を見る限り、成績が完全な中位層と言うのはかなり不自然。よほど無理矢理に学業をサボタージュしているのかと疑ってしまう。(それこそ彼のキャラではありそうもない。)
 海外放浪中の姉に遠隔操作されている風があり、えるには完全に振り回されて名探偵役をさせられている。が、気の進まなかったこんな役も、次第にえるを満足させる事にやり甲斐を感じて来るようになる。熱血型とはほど遠い男が、女の影響で何かに熱心に取り組む、と言うのは実に現実味のある話と思われる。


伊原 摩耶花

01
※何事にも真っ直ぐで不正を嫌う正義の味方的少女。里志に対してもバカ正直に告白を繰り返すが、確たる返事がもらえない。それでも仲良く友達付き合いを続けているのが、大人では考え辛い微妙な関係。中学校から付き合いのある奉太郎には良い印象を持っていない様子だが、高校で知り合った自分と対照的におっとりした性格のえるには好感を持ち「ち-ちゃん」と呼んで親しんでいる。奉太郎とえる、摩耶花と里志、と言う恋愛関係は交わることなく安定しているが、キツイ性格のため他生徒とのトラブルは絶えない様子。低身長でロリっぽい容姿と裏腹に、口が悪く容赦ない性格は萌え要素満載である。

福部 里志

01
※飄々として古典部ではムードメーカー的存在。雑学的知識に長けた「データベース」で交友関係も幅広いが、他人に心のうちを悟らせない風がある。求愛をはぐらかし続けている摩耶花に対してもだが、「データベース」に過ぎない自分と違い問題解決能力を秘めた奉太郎に対しても微妙な気持ちを抱いているようだ。原作では摩耶花と付き合いを始めているが、途中で終わったアニメでは今後の仲間内での関係に興味を持たせる。

参考動画→優しさの理由 ( Full 歌詞付き ) ChouCho 氷菓 OP - Hyouka

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