同級生 東野圭吾
無題



同級生の宮前由紀子は俺の子を身ごもったまま、そして俺の愛が本物だったと信じたまま事故死した。俺にできる償いは本気の関係だったと皆に告白することと事故の真相を暴くことだけだった。やがてある女教師が関わっていたことを突き止めるが、彼女の絞殺体が発見されるや、一転俺は容疑者にされてしまう。


☆いわゆる「本格ミステリー」ではない。必要な情報が全て提示され、それから読者に謎解きを求めるわけではなく、情報が小出しにされて、徐々に真相が明らかになっていく作りなので、いつの間にか事件が解決されてる感じに本格ファンだと戸惑うかも知れない。それに名探偵役も登場しない。
 だが、面白くないわけではなく、学園ものミステリーと青春ラブストーリーの融合で、読み応えがあった。主人公の障害を持つ妹に関わる謎が最初に提示され、それと関係のありそうな同級生のお嬢様、そして主人公の子を身ごもって車に引かれた彼女、と次々に出て来る主人公関連の謎が徐々に明らかになっていくのは、巧みな小説作り。社会正義に関連するモヤモヤを振り切って彼女と結ばれるラストは、賛否の分かれるところだろうが、前向きなハッピーエンドで読後感は悪くなかった。「本格ミステリー」でない前提で読めば、十分評価に値する佳作だと思う。


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