封建主義者かく語りき 呉智英
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民主主義と人権思想を盲信する世の中にあって、ひとり敢然と「封建主義」を説いた呉智英のデビュー作。サベツ刈りがより徹底され、どんな××の「人権」も絶対不可侵の時代が確立された今、本書の主張と笑いは、一段と新鮮である。


☆学生時代に出会って以来、大きな影響を受けて来た本。30年ぶりに再読して、それを確信した。特にファシズムは民主主義が生んだもので、無条件に民主主義を盲信するのは危険だと言う指摘はとても新鮮な視点で、民主主義を懐疑する態度を教えられたと思う。
 ただ当時も思ったのだが、民主主義に代わるべき思想として呉氏の提唱する「封建主義」は確立化された思想と言えるのだろうか。民主主義のアンチテーゼとしては有効だが、それをもって世を変える思想たり得るものでなく、したがって「封建主義者」と名乗るのは呉氏のみ、と言う実情なのではないか。
 しかしながら、今なお変わらず民主主義批判を貫いている呉氏の姿勢は立派であり、トランプ大統領の誕生を見ても彼の主張は有効だと思った。トランプを許してしまう事こそ、正に民主主義の危険性なのではなかろうか。


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