孤島の鬼 江戸川乱歩
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初代は3歳で親に捨てられた。お守り代わりの古い系図帳だけが初代の身元の手がかりだ。そんな初代にひかれ蓑浦は婚約を決意するが、蓑浦の先輩で同性愛者の諸戸が初代に突然求婚した。諸戸はかつて蓑浦に恋していた男。蓑浦は、諸戸が嫉妬心からわざと初代に求婚したのではないかと疑う。そんなある日自宅で初代が殺された。これは恐ろしく壮大な物語の幕開けに過ぎなかった―。


☆江戸川乱步の最高傑作と世評が高いらしい。実際に読んでみて個人的には非常に面白く感服したのだけれど、凄まじい内容の怪作で、到底人に勧められるような代物ではないと思った。男同士の同性愛はまだ許せるが、世を呪う身体障害者がかどわかして来た子供を人為的に身体障害に育てて常人では不可能な暗殺者として使うなんてヤバ過ぎる。フリークス趣味の極みで、人によっては吐き気を催してもおかしくない。明らかに万人向けではないと思う。
 これを世に問うた乱步も凄いが、現代に蘇って多くの人に彼の最高傑作と評価されるのが時代の変化を感じさせて興味深い。ただし繰り返すが、決して万人には向かない怪作であって、興味本位で手に取らない事を薦めたい。「公序良俗に反する有害図書」で図書館戦争の仮想未来なら、真っ先に発禁ものだろう。


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