明智小五郎事件簿 1 江戸川乱歩
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日本を代表する名探偵の一人、明智小五郎がはじめて登場した「D坂の殺人事件」。退廃的な空気が漂う大正9年9月初旬、“私”はD坂にある白梅軒という喫茶点で明智小五郎と知り合った。偶然、向かいの古本屋で発生した殺人事件。二人は第一発見者となる。犯人は、明智小五郎なのか―「幽霊」「黒手組」「心理試験」「屋根裏の散歩者」も収録。事件発生順に並べた画期的なコレクション、全12巻刊行開始!



☆明智小五郎登場作品を時系列で並べるという趣向の文庫本第1巻。未だ書生同然の明智が本に占拠された狭い部屋に暮らしているのがナイス! まるで、少女マンガ本の山の中で暮らしてた村山聖九段を彷彿とさせる。ボサボサ頭をガリガリと掻きむしる癖があると言うのは金田一耕助ソックリ。服装を構わないところといい、まるで俺じゃん、と思ったのは私だけ?
 日本におけるミステリの草分けの、さらに初期作品なだけにどれも習作っぽさは否めない。「D坂の殺人事件」なんて何のトリックもないが、SM愛好家の私としてはもちろん好印象である。最近既読の「屋根裏の散歩者」を含めて、一見幻想的な事件でも理知的に解決するのだと言う作者の意図がよく見える。もちろんエドガー・アラン・ポーを初めとする海外作家の影響ではあるが、日本の本格ミステリを開拓した先駆者はやはり偉大だ。
 ちなみに結構ミステリファンの私でも、日本の名探偵と言えば明智小五郎と金田一耕助しか思い浮かばない。初めが偉大過ぎると後継者は苦労するわけだ。


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