満願 米澤穂信
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死にたい人たちのあいだで、随分評判らしいのよ。

磨かれた文体と冴えわたる技巧。この短篇集は、もはや完璧としか言いようがない――。驚異のミステリー3冠を制覇した名作。

「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。


☆作者は古典部シリーズしか読んだ事がなく、いわゆる「日常の謎」系でほろ苦い青春物を描いているイメージだった。が、本書を読んでビックリ。作家として長足の進歩なのか、私の鑑賞眼が不足していたのか、こんな凄い作品集を書いているとは知らなかった。やはり「日常の謎」であり、犯人捜しの本格ミステリとは全く違うが確かにミステリである。扱っているのは人間心理の闇で、この人がなぜこの犯罪を犯したのか、と言う謎が描かれてどの作品も読みごたえがある。が、18禁小説を書いてる素人作家としてはやはり、美人中学生姉妹の恐るべき行動を描いた「柘榴」に度肝を抜かれた。個人的には江戸川乱步の「芋虫」を想起したが、間違いなく傑作と思う。他の作品も粒揃いでハイレベル。
 エンタテイメント性を保持しながら、ミステリを文学にまで昇華させたと絶賛しておく。


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