愚者のエンドロール 米澤穂信
cb2caef4



「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。


☆アニメの影響もあるけど、やはり推理小説としてより、キャラクターの立った青春小説として読むべきと思う。名探偵役を務めることになる主人公奉太郎にリアリティーがある。文化部系の男子なんて面倒くさがりが基本だから。そうゆう男が女の影響で変わり成長してゆく。これがこのシリーズに一貫したテーマだと思う。
 今巻では、姉や同級生のえるに加えて、上級生の入須が奉太郎に大きな影響を与える。妙な推理合戦に巻き込まれた奉太郎はさほど乗り気ではなさそうだが、結局は卓越した頭脳を発揮して謎を解明する。最後まで面倒くさがりのスタイルは変えないが、いつものえるだけでなく入須の期待に応えようと行動してしまう奉太郎は、少しずつ大人の男に成長しているのだ。
 いずれにせよ今巻のミステリ要素は完全な二番煎じでもあるし、思春期の少年が女の影響で(性的な意味でなく)変わってゆく青春小説として読むべきものだ。私も含めて文化部系の男は奉太郎に共感を覚えるのではないかと思う。えるのような理想的ガールフレンドはいなかったし、何の取り柄もないただの凡人だったとしても。


米澤穂信レビュー一覧