新選組血風録 司馬遼太郎
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勤皇か佐幕か、血なまぐさい抗争に明け暮れる維新前夜の京都に、その治安維持を任務として組織された剣客集団、新選組。名刀の真贋を軸に近藤勇の不敗神話を描く「虎徹」、赤穂浪士討ち入り以来の屈折した心情に迫る「池田屋異聞」、悲恋に涙する剣士の素顔を綴る「沖田総司の恋」など、「誠」の旗印に参集した男たちの内面を通して、歴史小説の第一人者がその実像を浮き彫りにする。活字が大きく読みやすい新装版。


☆国民的作家司馬遼太郎の本だけに、どんどん読める感じ。内容は主に新選組のメンバー達が京都で人を切りまくり「壬生狼」と恐れられていた時代の、長編では捨てられるであろうエピソードを集めた短編集。特に天才剣士沖田総司を取り上げた話が多いが、血風録の名に恥じない血生臭い話が満載で、現代の感覚ではとても考えられない。尊皇派の志士のみならず、隊規を保つため味方さえも次々に粛清してしまうとは、正に狂気の人殺し集団と呼ばれても仕方ないものだ。
 そうした現代的モラルを捨ててしまえば、単なる人殺し集団ではない新選組の人間味溢れるエピソードはこの上なく面白い。とりわけ、肺病で自分の命が長くない事がわかっており若くして悟りを開いたような沖田総司が、見つめるだけで良いという恋をしたり、借り物の名刀を使うのを躊躇って逃亡した敵を、味方が殺された事で一刀両断に屠ったり、と言うエピソードに私は魅せられた。
 まあ個人的にはこんな時代に生きたくないし、新選組と関わるなんて絶対ごめんだが。


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