翔ぶが如く〈2〉司馬遼太郎
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西郷隆盛と大久保利通―ともに薩摩に生をうけ、維新の立役者となり、そして今や新政府の領袖である二人は、年来の友誼を捨て、征韓論をめぐり、鋭く対立した。西郷=征韓論派、大久保=反征韓論派の激突は、政府を崩壊させ、日本中を大混乱におとしいれた。事態の収拾を誤ることがあれば、この国は一気に滅ぶであろう…。



☆西郷隆盛と言う傑物を中心に描いているが、重苦しく苦い読後感でエンタテイメント性はほとんどない。西郷隆盛自身が幕府を倒し明治維新を成し遂げた立役者の一人であるのは間違いないが、そこで彼の役目は終わったかのようにすら感じられる。頑迷な復古主義者島津久光に疎んじられて来た西郷だが、完全に袂を分かって近代国家建設へと向かう事が出来なかったのが彼の運命であり又限界でもあったのだろう。
 維新を機に老獪なまでの駆け引きを駆使する政治家の姿を捨て、愚直に人との絆を重視する大人に戻った西郷。時代に取り残されたと彼を批判するのはた易いが、実に丁寧に史実をたどった本作を読めば、事はそんなに単純であったわけではないのが良くわかる。
 なぜ西郷が冷静な判断を欠いて征韓論に固執し、西南戦争を起こして滅んでいったのか。今巻以後も、西郷の置かれた立場やその苦悩をかみ締めながら悲劇的結末まで読み通したい。


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