竜馬がゆく〈4〉司馬遼太郎
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志士たちで船隊を操り、大いに交易をやり、時いたらば倒幕のための海軍にする―竜馬の志士活動の発想は奇異であり、ホラ吹きといわれた。世の中はそんな竜馬の迂遠さを嘲うように騒然としている。反動の時代―長州の没落、薩摩の保守化、土佐の勤王政権も瓦解した。が、竜馬はついに一隻の軍艦を手に入れたのであった。



☆いよいよ動乱の世になって来て、竜馬の身辺もあわただしいが、この巻の白眉は幼い日からの盟友武市半平太の獄死と愛妻のエピソードだろう。理想家で真面目一徹な武市が藩に捕らえられ無理筋な理由で切腹を命じられるのは藩主山内容堂の暗君ぶりを嘆くよりないが、おしどり夫婦と評判だった愛妻富子のエピソードが何とも哀愁を誘う。ほぼ1年も獄中にあった夫を想って、畳の上では寝ず着衣のまま板の間で寝起きしたとか、切腹時の衣装を整えて獄中に差入れた、とか。武市の方も富子への愛と感謝を口にし、遺言代わりに自画を富子に送る。無残な武市の獄死だが、この夫婦愛のエピソードに救われた。


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